- 看護学研究科 研究科長/医療保健学部 看護学科 西上 あゆみ 教授 Ayumi Nishigami
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地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センターで看護師として勤務後、大学看護学部で助手を務めながら大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。その後、兵庫県立大学大学院看護学研究科で博士号を取得。2016年 日本看護協会会長表彰
静穏期こそ
災害に立ち向かうための準備期間。
災害看護の道も「継続が力」になる
阪神・淡路大震災が起きたのは、看護師となって病院の内科に勤務していた頃。西上教授は初めて被災地へ向かったものの、当時は避難所に聴診器や血圧計を持参することさえ思いつかなかった。支援を必要としている方々が目の前に大勢いるのに、有効に動けなかった悔しい気持ちが残る中、大学院で選んだ研究テーマは「災害看護」。以来、災害時の支援のあり方について研究を続け、自然災害に見舞われた各地へ足を運んで被災地の状況を調査し、被災者の不安に耳を傾けてきた。その情熱は災害支援ナースの育成にも注がれている。
どんな災害であってもナースが避難所に入ってまずやるべきことがある。当たり前のように思われるが、第一に環境整備。ナイチンゲールは最初にシーツを洗って部屋を掃除し、環境を整えることで兵隊の死亡率を下げたという。避難所は必死に避難してきた被災者がひしめき合っている状況なので、看護師が避難所に入る段階で環境に気を配る。それは普段どの看護師も病室で行っている「シーツを変えて掃除をする」習慣と同じだという。
授業で行われたグループディスカッション。被災地に支援に向かうことを想定して必要な持ち物や心構えについて考えた。
また、地域の病院も日ごろから災害に備えておかなければならない。この課題に対しても、西上教授は病院勤務の看護師としての経験を活かしてきた。病院の中で24時間365日患者さんの側にいる看護師だからこそできる備えがあると考え、看護部門に重点を置いた病院の備え対策に取り組んでいる。
「災害は忘れる前にやってくる」—災害サイクルにおける静穏期こそ、準備期間という考えを持ち、いつ起こるかわからない災害に立ち向かうための備えが大切。いざ災害が起こり、避難所へ支援に向かう際や勤めている病院が被災したとき、訓練してきたことを行動に移し、被災地が避難所や仮設住宅から復旧・復興するまでの回復を促す。それは回復力を意味するレジリエンスという言葉に表される。
西上教授が考える“災害に強い”看護師とは?「当然のようですが、へこたれない気持ちと体力が土台。基礎看護からしっかり学び、現地で役立つ災害看護の知識に強くなってください。支援に行く際や行った先で災害に遭うかもしれないことを想定し、自分で考える力も必要です。被災地の環境や食事管理にも知見をもってアセスメントし、時々に最善の判断を考え続けられる看護師さんになってほしい」。そのためにはやはり“継続は力なり”。続けることが跳ね返す力、レジリエンスになる。
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2016年の熊本地震では日本災害看護学会が実施する先遣隊活動に参加。活動に入る前に現地のマップを確認しながら入念に行動計画を練る。
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災害支援活動で被災地へ入る 実際に災害支援で使用する持ち物を見せながら、授業で解説する。